引き寄せ♡しあわセイション



中谷の話を分かりやすく要約するとつまり、
俺は言葉を発する事の出来ない作曲家の役柄で
ほんのひととき登場する程度
セリフももちろん無い。

ただ、
ピアノに向かい音を出し作曲するというシーンが有る。

だから音楽に携わる人物に演じてもらいたいと思っていた所、
脚本家の娘が偶然にも俺の曲を知っていて、
そんな経由で中谷に話が来たらしい。



「キイナさん
知名度、上がって来たじゃないですか」

「いや、それは良かったとしても俺、
ピアノは素人だぞ」

「まだ撮影に入るまで時間が有りますから
レッスンを受けて腕を磨いて下さい」

「何年もピアノなんて弾いてないぞ」

「ドラマ出演が上手く行けばキイナの知名度が爆発的に上がりますよ!」




勝手に盛り上がってる中谷をよそに
俺は昨日のピアノの音色が頭をよぎっていた。
雨と桜の匂いが心地良かった。



あの女の人は何故泣いていたんだろう
いや、実際は泣いてはいなかったんだろうか

あれから雨の上がった泣き空に薄く透き通った虹が架かったのを、
あの女の人は見る事が出来たんだろうか?


見れてたらいいと思った。











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