甘い恋は復讐の後で
 今日の伶央さんは珍しく疲れていそうだった。

 無理して私にビリヤードの時間を作ってくれなくても帰って早めに寝ればいいのに。

 たぶん謝りに来てくれたんだと思う。
 来てくれなかったら悩んでいたとは思うけど……。

 律儀な男ってこういうことなのかな。と、納得する思いだった。

「伶央さん眠そうですし、次回にしません?」

 私の提案に目を座らせた伶央さんが即座に返した。

「眠くない。」

 それ、酔っ払いの人が「酔ってない」って言うのと同じやつじゃないかな。
 そう思うのに伶央さんは折れてくれない。

 頑固なんだということはここ数日で気づいた彼の性格。
 言っても無駄なのだと割り切ってビリヤードを楽しむことした。

「今日もナインボールでいいですよね?
 今日こそは勝ちます!!」

「どうだか。」

 鼻先で笑う彼に勝てたことがないから、ぐうの音もでない。

 それとなく形にはなってきた私と最近はナインボールをする。

 ハンデとして私はネオナインボールという簡単なルールの方で。
 伶央さんは通常のナインボールのルールに加えてコールショットという狙ったボールをどのポケットに落とすか宣言するルールも加えている。

 それなのに勝てたことがない。

 プレイする伶央さんがカッコよくて度々見惚れてしまうのも負けてしまう敗因の気もしなくもないけど。
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