甘い恋は復讐の後で
 助けたかったのに手遅れで見るも無残な姿を見るはめになった。

 それでも手を伸ばす。

 もう少しでつかめそうなのにその手をつかめずに離れてしまう。

「あぁ。うわぁー!!」

 自分のうめき声で目が覚めた。

 夢だと自覚するまでに肩で息をして辺りを見渡す。
 久しぶりに見る夢。
 脂汗までかいている自分に失笑が漏れた。

 天候が思わしくない空を見て早めにマンションに帰った。

 もう随分昔の話だ。
 それなのに………。

 近くにあいつなんかを置いておくせいかもしれない。
 嫌でも思い出すアイツ。

 髪に手を入れて頭を抱えた。
 歪ませればいい。
 へらへら笑う平和ボケしたあの顔を。
 望んでいたことじゃないか。

 浮かぶのは俺を見て嬉しそうに微笑む顔。

 俺はどうしたいんだよ………。

 うなだれて泣いてしまいたかった。

 ハスと名乗った理由を聞かれた。
 正直に答える義理はない。

 それなのに長々と語った上に最後にこんなことまで送っていた。

【嵐の夜だった。
 だからこんな夜は苦手だ。
 一人でいたくない。】

 こんな気持ちをあいつに吐露するなんて…。


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