甘い恋は復讐の後で
「どうして大家さんがうちの兄と?」

「え?だってお婆ちゃまの具合が悪いんでしょ?
 だから今月まででアパートを出て行くから迷惑をかけてすみませんって挨拶をしてくれて。」

「お婆ちゃまって………。」

 そんなこと聞いてない!
 それにうちのお婆ちゃんは元気はつらつでヨガの先生をするような………。

「今月までって明日ですよね?」

「え、えぇ。
 だから引越し屋さんも来て荷物も全部持って行ってもらったし、退去の立会いもお兄さんがしてくれたわよ。
 本当に何から何までいいお兄さんね。」

 大家さんはニコニコ笑って話し終えると「明日の朝には松永さんの鍵も返して頂戴ね」と言い残して去って行った。

 呆然とする私の横でクククッと笑う伶央さんが「インパクトの強いお兄さんみたいだね」と楽しそうに言った。

 他人事だと思って………。
 八つ当たり気味に伶央さんに文句を浮かべて、それでも足が動かない。

「アパートの中、見てみるか?
 何もかもが無くてショックを受けそうだけど。」

 勝手に空っぽにされた部屋を見るなんて耐えられなくて頭を力強く左右に振った。


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