甘い恋は復讐の後で
 丁度いいじゃないか。
 今まで優しくしてきたのは、こんな日の為だろ。
 豹変して失望させて顔を歪ませて………。

 ウキウキで料理を作っている莉緒の隣に行って手を………。

「何ですか?
 緊張するのであっちに行っててください!」

 照れたように顔を伏せて背中を押す莉緒の体を押し倒して馬乗りになって…………。

 それが出来ない自分が歯がゆくて仕方ない。

 やっと来たチャンス。
 これを逃したら一人暮らしもやめ、もしかしたら再びコイツは鳥の籠かもしれない。
 そしたら手を出すことも難しくなる。

 カウンターに座り、テーブルに顎を乗せ様子を伺った。

 鼻歌混じりの莉緒。
 規則正しく何かを刻む音。

 それらが心地よくて聞いていたくて、まだ……明日からもたっぷり時間はある。
 ゆっくりじわじわ追い詰めればいいと自分を誤魔化した。

 家に人がいて料理のいいニオイがしてくる絵に描いた幸せの縮図。
 それが眩しくて目を細めた。

「眠いんですか?」

「いや……。」

「もう食べれますよ?
 配膳はお手伝いよろしくお願いします。」

「あぁ。」

 子ども扱いしやがって。

 口を曲げつつもなんだか楽しい気分だった。


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