甘い恋は復讐の後で

16.壊れたウサギ

　足取り重く伶央さんのマンションに帰る。
　ここ以外に帰る場所がない。

　マンションの近くに来ると伶央さんを見つけた。
　心は一瞬だけ弾んで、すぐに地の底へ沈んだ。

　その横にはスラッと背の高い長身な女性。
　伶央さんと並ぶとちょうどお似合いで絵になる二人。

　伶央さんは彼女に優しい笑顔を向けていた。
　心から信頼しているのが分かる。

　マンション……そっか鍵を置きに来てくれたんだ。

　夜は遅くなる前に帰るからって本当に？

　マンションに帰る気になれなくて方向転換をすると別の方向へと歩みを進めた。


　しばらくぼんやりしていたら電話がかかってきた。
　どのくらい時間が過ぎたのかは分からない。

　何も考えたくなくて、どこかのスイッチが壊れてしまったみたいだった。