甘い恋は復讐の後で
「クシュン。」

 汗が冷えてクシャミが出た。
 ったく。なんて日だよ。

「フッ。フフッ。」

「なんだよ。」

「だって可愛いクシャミ。」

「……放っとけよ。」

 突然立ち上がった莉緒に声を掛けた。

「どこに行くんだ。」

「帰ります。」

「あっそ。」

「風邪をひかれても困るので。」

「はいはい。」

 なんで上から目線。

「それとも口移しで薬を飲ませた方がいいんでしょうか。」

「……ッ。何を………。」

 莉緒は冷めた目で俺を見つめる。
 そんな目で見られたいわけじゃない。

 財布を出す莉緒を制止した。

「払うよ。」

「結構です。」

「うるさい。払わせろ。」

 ムスッとして俺の側で待つ莉緒にこっちが不貞腐れたい。

 哲哉が顔を出して「莉緒ちゃんの方がうわてかもね」と余計なお世話な一言を言った。

「うるさい。」

 掻き回すような真似しやがって。

「女性が強い方が上手くいくものですよ?」

「何がだよ。」

 マスターまで余計な事を言って辟易しながら店を出た。


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