甘い恋は復讐の後で
「尚之さんのやり方は間違ってますよ?
 そのせいで莉緒は悪い男に絡まれて襲われかけた。」

 箱入り娘で世間知らずで。
 莉緒みたいなヤツが心配なのは分からなくもないけれど完全に間違ってる。

「悪い男は伶央くんじゃないのかい?」

「伶央さんは助けてくれたの!!」

「ユキさんと全く同じじゃない。」

 郁と莉緒の両方に言われてぐうの音も出ない顔をする尚之さんがおかしかった。

 俺は莉緒に耳打ちをする。

「ま、俺はここまで箱入りで嬉しいこともあったけど。」

「ん?」

「俺が初めての男ってこと。」

 耳元で囁くと莉緒は真っ赤な顔をさせた。

 尚之さんは俺たちから離れて座っていて話している内容までは分からないだろう。
 それなのに尚之さんは今にも殴りかかりたいような顔でこちらを見てるのがおかしかった。

 莉緒とイチャイチャしてるのが一番の仕返しだなんて。

 あぁ。もう誰も恨まなくていいのか。
 そう思うと心は晴れやかだった。

「いいな〜。みんな幸せそうで。」

「郁も今の彼氏は大丈夫って言ってただろ?」

 郁が落ち着いてきた今だから良かったのかもしれない。
 荒れていた時に莉緒に出会っていたら本気でどうしたか……どうかな、どっちにしても俺が莉緒に振り回されたんだろうか。

 郁は俺を見て意味深に笑う。

「んー。まぁね。
 でも会いたくなっちゃうよ。
 伶央兄のそんな珍しい顔見てると。」

「珍しいって……放っとけよ。」


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