甘い恋は復讐の後で

　伶央さんを盗み見ていた女の人達は見てしまった人もいるだろう。

「見られ、見て………。」

　目を白黒させていると笑われた。

「見る５段活用？」

「ご？」

「５段活用って子どもの頃にやったろ。
　来いの場合は「こ、き、くる、くる、くれ、こい、とか。
　懐かしいな。」

　昔を懐かしむように目を細めた優しい伶央さんの表情にまたまたドキリとする。

「見るは上一段活用。
　来るはカ行変格活用。
　遠い昔だから忘れちゃったんでしょ？
　これだからオジサンはヤダな。」

　別の声が呆れたように指摘して私の隣に腰をかけた。

「哲哉さん！」

「あ、シンデレラ？
　可愛い莉緒ちゃんにピッタリだね。
　イテテテテ………。」

　楽しそうに話しかけてきた哲哉さんの頬を伶央さんが思いっきりつねった。

「うるせぇ。
　俺がオジサンじゃなくてお前がガキなんだよ。」

　悪態をついていても楽しそうで。
　仲よさそうだ。とっても。

　キス、見られては……ないよね。
　哲哉さんが見たのなら冷かさずにいられないような人だし。