甘い恋は復讐の後で
「お前、男との距離、注意しろよ。」

 伶央さんのマンションまで歩く帰り道、当たり前に手を繋がれて、なんだか慣れない。

「おい。聞いてるのか。」

「は、はい!」

 怒られて見上げると伶央さんと目があった。

「………だから、その目。」

 ため息をついた伶央さんが自分の髪をクシャクシャとかき回してからチュッとリップ音を立ててキスをした。

 わぁ………。
 もう、なんでそんなに自然なの?

 こっちは動揺しっぱなしなのに、伶央さんは歩みも止めないで普通に歩いている。
 私はといえば、伶央さんに手を引かれてかろうじて歩いているようなおぼつかなさ。

「慣れてて、なんだか、嫌です。」

 つい、本音が口からこぼれ落ちた。

「は?」

 理解できていなさそうな声を上げた伶央さんが顔を覗き込んだ。
 そしてからかうように言う。

「………フッ。妬いてんの?」

「違っ!……違わないです。」

 からかうように楽しそうに言った伶央さんを押し退けて顔を俯いかせると頭上でボソッと伶央さんが何か呟いた。

「無自覚誘惑女。」

「え?」

「いや。こっちの話。」


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