甘い恋は復讐の後で
『莉緒?莉緒??どうしたんだ。』

 騒がしい兄を嘲笑うようにチュッとわざと音を立てたようなキスをされる。

『……な、どうしたんだ。
 莉緒が投げキッス?』

 見当違いなことを言う兄を尻目に再び私に迫ろうとする伶央さんは急に艶めかしい男の顔に変わってドキリとする。

「………ッ。」

 唇の形をなぞるように舐められて、手にしていた携帯を落としてしまった。
 動じるなって方が無理だと思う。

「莉緒………。」

 囁いた声は甘くて。

 フッと息を吐いた伶央さんが私が落とした携帯を拾い上げた。
 ものすごく騒がしい兄へ伶央さんは冷めた声で告げた。

「二人の時間を邪魔しないでもらえませんか?」

 電話口の向こう側で息を飲んだ兄の気持ちが痛いほど分かる。
 兄妹揃って伶央さんに翻弄されて、なんだか居た堪れない。

『伶央くん!莉緒の携帯に出るのを……というよりも莉緒から離れなさい!!』

 兄にしては珍しかった。
 いつもどんな手を使っても私から男の人を引き離すのに、伶央さんとは未だに私が居候する形で一緒にいられている。

 その上、電話でそんなこと喚いたところで無駄なのに……。
 だって目の前の伶央さんは何か変なスイッチが入ってしまっている。

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