甘い恋は復讐の後で
「あ、あの。伶央さん?」

「何?」

 私の呼びかけに伶央さんは柔らかな笑みを向ける。

「大丈夫。
 今日は恋愛初心者の莉緒のペースに合わせるよ。」

 ベッドに私を下ろした伶央さんは色気漂う甘い顔で私の頬をそっと撫でた。
 それだけで自分で座っていられないほど、とろけてしまって伶央さんにしがみついた。

「…………あの、どうかひと思いに。」

 伶央さんの雰囲気とこの部屋に飲まれて、この前の情事が鮮明に思い出されて、恥ずかしさとか色々ごちゃ混ぜで……。

 伶央さんは困ったような声で言った。

「……煽るなって。
 今日もまた莉緒を風呂に入らせてあげられなくなる。」

 近づいてくる伶央さんの色気はそれだけで……。
 
 あれ?

 キスをされると思っていたのに伶央さんは抱き締めただけ。

「風呂、行っておいて。
 本気で離せなくなる。」

 耳元で囁かれてコクコクと頷いた。

 体を離す伶央さんに急に寂しくなって、気づけば体が勝手に動いていた。

 手を伸ばして伶央さんの腕を引っ張ると目を丸くした伶央の顔が……。

「……なっ。」

 唇にキスをして、それから逃げるように部屋を出た。
 伶央さんが「………無自覚。マジでタチ悪い」と、うなだれた言葉は私には届かなかった。


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