甘い恋は復讐の後で
「隣でやらなくてもいいだろ?」

「今日は元々、伶央とやりたかったんだ。」

 店内は薄暗く大人な雰囲気漂うビリヤード場?
 とにかく私には場違いな空間。

 私は隅に置かれた小さな椅子に腰をかけて背の高い椅子に足が床につかないことを不安に思いつつ小さくなった。

 ただ、二人は様になっている。

 綺麗な指先はボールをつく棒をのせる為に緑のテーブルのような場所の上で形作る。
 体を曲げ、一点を集中して動くのは右の肘から下だけ。

 他の部分は微動だにしないのに棒がつかれると力強くボールを弾いて他のボールにも当たる。
 その乾いた音がなんとも爽快だった。

「俺、哲哉。
 で?君は何しに来たの?」

 知り合いの人に話しかけられて胸に抱えたままだった袋を……。

「おい。気が散る。」

 睨まれて見せようとしかけた袋をまた胸に抱え直して口を噤んだ。
 隣ではクククッと小さく笑っている。

「今日は俺、勝てるかも〜。」

 嬉しそうな声で小さく言ったその人はふふっと満足そうに伶央さんを見ている。

 伶央さんより若い……というより幼く見えた。







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