甘い恋は復讐の後で
女は「お世辞じゃないのに」とぶつくさ言いつつ真似して構え始めた。
教えてやると言った手前、少しは見てやろうかと思い留まって女の構えをいくつか手直しする。
「ここは、こう。ここは……。
なんだ。やる気あるのか?」
女の視線の先は別のところに向いていて、やる気がないのならと不満が漏れた。
教えるために屈めていた体に不意に手が伸びて頭の上でパチンッと音を立てた。
そしてすぐ近くにあった顔が破顔した。
「可愛い。似合ってます。」
「…………何が。」
「プッ。あははは………。」
腹を抱えて笑い出した哲哉に周りは迷惑そうに眉をひそめ「んんっ」と誰かが咳払いした。
ビリヤード場で騒ぐのはマナー違反だ。
「だって……ヒー……。本当、似合ってる。
ククッ。伶央におあつらえ向きだ。」
どうにも笑いを堪え切れないらしい哲哉は「風に当たってくる」とクククッと笑いを漏らしながら店の外へと出ていった。
「伶央さん似合ってます。」
クスクス笑う女にも『伶央"さん"』なんて呼び方も居心地が悪くて無言で便所へ足を向けた。
教えてやると言った手前、少しは見てやろうかと思い留まって女の構えをいくつか手直しする。
「ここは、こう。ここは……。
なんだ。やる気あるのか?」
女の視線の先は別のところに向いていて、やる気がないのならと不満が漏れた。
教えるために屈めていた体に不意に手が伸びて頭の上でパチンッと音を立てた。
そしてすぐ近くにあった顔が破顔した。
「可愛い。似合ってます。」
「…………何が。」
「プッ。あははは………。」
腹を抱えて笑い出した哲哉に周りは迷惑そうに眉をひそめ「んんっ」と誰かが咳払いした。
ビリヤード場で騒ぐのはマナー違反だ。
「だって……ヒー……。本当、似合ってる。
ククッ。伶央におあつらえ向きだ。」
どうにも笑いを堪え切れないらしい哲哉は「風に当たってくる」とクククッと笑いを漏らしながら店の外へと出ていった。
「伶央さん似合ってます。」
クスクス笑う女にも『伶央"さん"』なんて呼び方も居心地が悪くて無言で便所へ足を向けた。