甘い恋は復讐の後で
 帰り道を歩く伶央さんはずっと無言だ。
 何かを話しかけられる雰囲気でもない。

 あんなに……ただからかわれて笑われただけだけれど、笑って穏やかだった。
 その姿が嘘みたいだ。

「私……こっちなので。」

 その一言で夢の魔法が解けてしまう。

 もうとっくに解けかけていたんだから無駄なあがきなんだけど、もう少しだけ一緒にいたかったと欲張りな自分が顔を出す。

 不思議な国のアリスに出てくるウサギはなんだっけ?時計を持って急いでたけど。
 ウサギな私にも同じようにタイムリミットが迫っているのかな。

 ゆっくりと視線を移した彼が私を見た。
 その眼差しは冷え切っていた。

「もう二度と俺の前に姿を見せるな。」

「え………。」

 突き放した言い方に呆気に取られていると彼は振り返ることなく去って行った。

 私はただ呆然と彼の後ろ姿を眺めることしか出来なかった。











< 36 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop