甘い恋は復讐の後で
 莉緒のアパートから帰る帰り道。
 つい大谷くんに不満を漏らした。

「のんびりしてるから。」

 もうずいぶん前から大谷くんが莉緒に想いを寄せているのは分かっていて、度々ハッパをかけているのに一向に行動を移さない彼に呆れていた。

 それで、今日の莉緒の報告だ。

 私の文句に大谷くんは頭をかいて言い訳を口にする。

「近いから…身動き取れないんだ。
 フラれても近い距離にいなきゃいけないだろ?」

「何でフラれる前提なの!
 弱ってる今ならチャンスじゃない。」

 今日はここ最近、元気のない莉緒を心配して押しかけたようなものだった。
 その理由が気になる人が出来て、その人に冷たくされたからってことらしい。

 得体の知れないその彼よりも大谷くんの方が莉緒の相手としては安心できる。

 夢見がちでたまに抜けてる莉緒の初めての恋のお相手が悪い男ではハードルが高いと思う。

「それは……。
 そんな卑怯な真似したくない。」

 馬鹿正直なんだかなんなんだか。

 そういうところが莉緒にお似合いだと思うんだけどなぁ。
 2人ならほっこりした穏やかなカップルになれると思う。

 ま、ただ私の勝手な老婆心なんだけどさ。

 見るからに凹んでいる大谷くんになんだかなぁとため息を漏らした。







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