甘い恋は復讐の後で
 二足のわらじも楽ではない。

 会社が副業を禁止しているから。
 もちろんそんなチンケな理由ではなく、激務を掻い潜ってバーで働くのは並大抵のことではなかった。

 ただ慣れてしまえばどうにでもなるものだ。

 外せない会議がある時以外は決めた曜日に残業するようにしていて定時の日にバーに顔を出していた。
 同僚たちは皆、習い事か何かをしていると思っているようで人のことを信用し過ぎてると馬鹿にする気持ちでさえいる。

 今のところ俺にはこの生活が合っているらしく快適だ。

 そして今日はどうにも仕事が捌けなくて休日出勤を余儀なくされていた。
 休日出勤も続かなければまぁヨシとしよう。

 仕事はまだまだ終わりが見えなくて、椅子に座ったまま体を伸ばすと休憩を挟むことにした。
 手に取った資料をチラリと見て、デスクに戻す。

 確かにプレビアス社からもらう資料はいつの日からかとても見やすく分かりやすい物になった。

 それが彼女の功績によるものだったとは。
 複雑な思いを抱えながら休憩室に向かった。




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