甘い恋は復讐の後で
「え……どうして……。」

 会社を出ると再び人が待っていた。
 昨日に今日、どういう日だろう。

「やっと来た。」

 驚き過ぎて間抜けな顔をしてたと思う。
 だって………。

「ほら。行くぞ。」

 指し示された方へぎこちなく足を出した。
 心臓はこれでもかと音を立てる。

 私の前を歩いて行くのはまさかの伶央さん。
 どうして…………。

「下僕を待つご主人様って、普通逆だろ。
 いい加減、連絡先を教えろよ。」

 苦笑する伶央さんに「!!ごめんなさい!」と慌てて携帯を取り出した。

 無事に連絡先を交換して、夢見心地で伶央さんと並んで歩く。

 嘘みたいだ。
 理由はどうあれ伶央さんが迎えに来てくれた。

 昨日、お兄ちゃんと歩いた時とは緊張感が全然違う。
 見上げる角度はお兄ちゃんより少しだけ高い。

 切れ長の目に整った顔立ち。
 兄とは違った種類のカッコ良さだ。

 うん。ヤダ。すごくカッコイイ……。

 歩きながら眼鏡を外し、流していた髪もクシャクシャと崩した彼は仕事モードからプライベートの時間へスイッチしたのが分かった。

 崩した髪は目に入りそうで前の時と同じ気持ちになった。

「何?あんまり人のことジロジロ見んな。」

 頭を押さえつけられてグルリと回転させられた。
 残念ながら前回と同じようには出来なかった。




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