愛を私の音色に乗せて。


伸二さんにお礼を言って、また少し山の奥へと進んでいく。

…結局2人の会話の意味がよくわからないままなんだけど、

「ちぃ君、どこに行くの?」

「秘密基地。もう着くよ」

秘密基地、?
なんか今日はよくわからないことが多くて頭が混乱し続けている。

というか、今日ちぃ君の誕生日だよね!?
本当に私ついて行くだけで良いのかな…?

「紫音、あれ見て!」

ちぃ君の指差す方を見ると、

「…すごい、なにここ…!」

ここの一角だけ木がなくて、自然に馴染んだ可愛らしい三角屋根の家がある。

それに、ここから見える景色はとっても綺麗だ。

まるで自然が作り出したかのような小屋は、不思議な生命力を感じて。
…生きているんだなぁって思わされる空間だ。

「ここね、俺が小さい頃よく来てたんだよ。何か思い悩むことがあった時、ここに来ればどうでも良いやって思えんの。」

すっげえ良いとこだろ?
と、昔よく見た無邪気なえがおを見せてくれた。

「何回も来てたら、伸二さんが「いつでも来れるように」ってこの家を作ってくれて、俺の秘密基地になったんだ」

「そうなんだ…こんなところにずっと居られたら心が綺麗になり過ぎて透明になっちゃいそう、」

多分、私の心はもう半透明になりかけているはず。

「ふはっ、なにそれ。紫音の心は元々綺麗だよ?
それ以上綺麗になられたら困る」

「相変わらずお上手ですねっ」

「…紫音も相変わらず謙遜しすぎだな。」

「えっ、なんて?」

ボソッと言われて聞こえなかったじゃん。

「なんもないよ。川行こうよ!俺ずっと行きたかったんだ」

「川!?行く!行きたい!」

川とか行ったことないかも…すっごい楽しみ!


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