愛を私の音色に乗せて。
「54番 伊藤 紫音です!よろしくお願いします」
審査員の人は男の人2人だけ。
1人はダンディーな感じのイケメンさん、
もう1人は眼鏡をかけたインテリお兄さん
…いやそんな事今はどうでもよくて。
「では一曲目、お願いします。
題名は?」
「“いつもどこでもなんどでも”です。お願いします」
まずはギターで弾き語り。
…ん、?
歌い終わったのに、なんの反応もない…それがオーディションなの?
この何も無い空白の時間って恐ろしい、
次の曲に移ろうと思いギターを下ろすと、
「君、いいね。見た目からは想像できない声出すじゃん」
「へ…?」
まさか褒められると思ってなかったから、間抜けな声が出てしまった…
「ふはっ、ごめんね引き留めて。
次の曲お願い。」
「あ、はい!
題は『ススメ』です」
いつも『ススメ』はギターだけど、今日はピアノで弾く。
この曲のピアノ、自分で作っといて何だけど、難しいんだよね。
一度歌い出してしまえばこっちのもの、緊張も少し和らいだ!
ただ、歌い終わるとまた沈黙…
お礼をして部屋を出るべき?
そう考えて椅子から立つと、
「ねぇ、伊藤紫音さん?
このあと帰らないでロビーで待っててくれない?」
ロビー…なんでだろ、
「…はい!」
「じゃあまた後で、お疲れ様!」
「ありがとうございました!」