Bloody Kiss♡
stair.05 ブラッディキス
二階のバルコニーから、セトは月を見上げている。
真冬の冷たい風に黒いマントを揺らし、彼は微動だにしない。
「寒いってば‥。」
月明かりに照らされた彼の横顔に、あたしは不満を投げ掛けた。
セトにさらわれて、今夜で三度目の夜‥
あと四日経てば、ホントに帰らせてくれるのかな‥?
そんなことを考えながら、あたしは屋敷の周辺を見渡した。
向かい側にあるはずのカラオケ店も、道路さえも見えない。
人工の明かりひとつ無い空間に、この建物はあった。
人間界ではない別世界。
庭から夜空を見上げた時にも感じた違和感が、あたしの中に戻って来た。