Bloody Kiss♡
「でも、なんで?どうして、あたしが?」
その疑問が消えないのは至極当然のことで、つい数日前まで あたしは平凡な専門学生だったわけで、こんな不思議な世界とは無縁に生きていたんだ。
「ビジョンがある。魔王が求める人間の女の姿形、そして条件。だが、それは あとで分かる。」
星ひとつ無い夜空は、空自体がキラキラと煌めいて、まるでブラックダイアモンドのよう。
怪しい光を放つハーフムーンは、時間を追う毎に赤味を増している。
人間界から見る夜空とは違う。
感じていた違和感が何か、ハッキリと気付いた。
「セト様。」
背後でホルスの声がした。
振り返ると、彼は、あの書物を恭しくセトに向けて差し出していた。
「そろそろ、ロナに魔界の為に奉仕して貰う時間だな‥。」
独り言のように呟いて、セトは片手でホルスから書物を受け取った。