Bloody Kiss♡
冷たい風が勢いを増して吹き付けて来る。
なのに、寒さは感じなかった。
否、感じてる余裕なんて無かったんだと思う。
「ちょ!どこ行くの!?空!?」
安全バーを握りしめ前を凝視して、あたしは訊いた。
妖しく輝くブラックダイアモンドの夜空には、半月より少し膨らみを帯びた月。
赤く発光した月が、ぐんぐんと近付いて来る。
答えをくれないセトに苛立ちを感じて、あたしは声を荒げた。
「ねぇ!聞いてる?どこ行くのってば!!」
セトは、当然とでも言いたげに
「行き先はミスティックステイト。魔王、ルシフェル様が待つ魔界だ。」
と、余裕の声で答えた。