Bloody Kiss♡


マリィは、あたしを見つめた。

その瞳に何故だか温もりを感じた。


「あなたは魔物じゃない。そうでしょ?」


二度目の問いに、答えをくれようとしたのかどうかは分からない。

彼女が、その艶やかな唇を開きかけた時

「マリィ・リマ様!マリィ様!」

空から彼女を呼ぶ声が聴こえ、その途端、マリィの瞳から温もりが消えた。


「このガーデンに住まう者は誰も、自分が何者かを存じておりません。わたくしも、あの幻惑鳥も皆、魔王様の命を成し遂げる為に存在するのです。」


そう言って、マリィは頭上を旋回する銀色のカラスのような鳥を見上げた。

幻惑鳥と呼ばれたその鳥は、再度

「マリィ様!」

と、彼女の名を呼び、お城へと飛び去った。


「準備が整ったようですわ。では、参りましょう。」


マリィは真珠色に輝く城へと、あたしを促した。


 
< 149 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop