Bloody Kiss♡
気付けば、黒みがかった赤の世界があたしを取り囲んでいた。
「ここは‥?」
停止したまま、ゆらゆらと小船のように揺れるコースターの上で、そこが海だと分かった。
「降りるぞ。」
「こんなとこで無理やん!」
「反抗期かよ。」
呆れ顔でそう言って、セトはあたしを抱き上げ、赤黒いさざ波を立てる海へと降り立った。
ふんわりとラルフローレンの香水のような彼の匂いを感じたけど、そこに酔う余裕は無かった。
海は歓迎するかのようにセトの両側に分かれ、道を作った。
黒光りする道は、真っ直ぐ魔城へと続いている。
「やっぱ、行きたくないかも。」
無駄だと思いつつも、本心を口にする。
「問答無用だな。」
あたしを抱き上げたまま、セトは魔城に向けて ゆっくりと歩き出した。