Bloody Kiss♡
「ね、一緒に人間界に行こ。あたしもセトがすきやもん。だから‥。」
「アツヤは、どうすんだよ‥。」
「真実の愛が何よりも強力なら、なんで、アツヤは簡単に魔術に掛かってしまったん?」
きっと、セトが術を施すまでもなく、アツヤのココロは、あたしから離れかけていたんだ。
「あたし、セトがすき。見た目も中身も全部。だから‥。」
「無理だな。」
即答されて哀しくなる。
失恋の苦味が唇を震わせた。
「なんで‥?」
半分、泣き顔になって あたしは問い掛けた。
セトは
「オレはバンパイア。人間との共存は不可能だ。考えても見ろよ。万が一、オレがバンパイアだと人間共が気付いたらどうなる?捕まえられて見せ物小屋に売られるか、殺されて解剖されちまうか、そのどっちかだろ。」
と、言った。
「そんなの、ミストになれば大丈夫やん。誤魔化すのヤメてよ‥。あたしのこと、すきって言ったやん。」
「魔物と人間は、一緒には暮らせねーよ。バンパイアは特にな。すきでも越えられねー壁はあんだよ。ほら、もう時間だ。急げ。」
パラパラと城壁が崩れ出した。
それは、魔界の浄化を告げている。
「セト‥。」
あたしは、深紅のドレスの胸元から小鬢を取り出した。