Bloody Kiss♡
セトは、そんなあたしを ただ見ているだけだった。
その上、彼にはナイフもフォークも用意されていない。
「ね、セト‥、セト様は食べないの?それとも、もう済ませた?」
彼は、意外な質問だと言わんばかりに軽く眉を上げ
「バンパイアが何を食すか知ってるだろ。」
って、答えた。
「何を‥って、血‥?じゃ、ご飯は食べないの?血だけ?」
その問い掛けに頷いて、セトは
「ホルス、デザート用意してやれよ。」
と、ダイニングルームの隅に待機している、さっきの男に指示をした。
「畏まりました。セト様。」
屈強そうな男は恭しく頭を下げ、キッチンへと向かった。
─ ホルス‥
彼の名を頭の中で繰り返した時、あたしに数年前の記憶が甦ってきた。