Bloody Kiss♡
半ば慌て気味に制服に袖を通す。
壁時計は、7時5分前を指していた。
「ロナ、知ってる?」
着替え終わったくるみは、タイムカードを押すと
「最近、この辺りで犬が仮死状態で発見されてるんやって。」
と、言った。
「なんで?」
「分からんけど‥、変質者の仕業かな?うちも犬いるし、しかも、大型犬ばっか狙われてるらしいし、心配。」
「マジで?」
問い掛けながら、あたしもタイムカードを押し、くるみと一緒に更衣室を出た。
動物虐待は、その対象がいずれ人へと代わることがある。
過去に、そんな事件が報道されていたことを覚えている。
「でも、鳥や猫じゃなくて大型犬?なんか不気味‥。」
人間の目には見えないセトの屋敷なら、変質者の侵入は不可能だと分かっていても不安に感じる。
セトのことを くるみに話せないまま、あたしは仕事に就いた。