Bloody Kiss♡
stair.04 ピンチ!
「失礼します。」
事務所に入ると、店長は古びた合成皮革のモスグリーンのソファに座っていた。
「相田くん。ま、座って。」
「はい。」
指示された通り、店長の向かいに腰掛ける。
「なんか飲む?」
そう訊いた彼に
「じゃ、ジンジャーエールで。」
と答えて、ソファから立ち上がった店長を見ていた。
彼は二十代後半だけど、正確な年齢は知らない。
痩せていて色白で、浮世絵みたいな顔をしている。
肩まで伸ばした黒い髪を、後ろで一つに括っているけど、撫で付けた整髪料のせいか清潔感を感じない。
短いシッポみたいな毛束を揺らして、店長は事務所の奥にある衝立の向こうに消えた。