青夏ダイヤモンド


「充希への嫌がらせ、辞めてくれてありがとう」

谷下さんは小さく鼻で笑う。

「私じゃないって言ってんじゃん」

思ったよりも静かな声で、呆れたように吐き出した。

「1年の時、浮いてたあんたがいつの間に友達思いの偽善者になったわけ?充希だって都合のいいように、あんたのこと使ってたのに、良くやるよね」

「過去を責めても意味が無い、ってわかってるから」

「かっこいいね、ウザいほど」

過去が変えようのないものだということは、痛いほど思い知らされている。

きっと、彼女には伝わらないだろうけど。

到着まで私は読書、谷下さんは眠る事に専念し、気まずさはあったものの、お互いそこから立つ事はしなかった。

バラバラに電車を降りて、谷下さんが足早に歩を進めたので、私は追いつかないようにゆっくり歩くことにした。

颯爽と歩く谷下さんの姿は、前見た時よりも頼りなく見えた。


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