青夏ダイヤモンド

数日後の放課後、充希と下駄箱に向かう途中、ガランとした普通クラスの窓際にもたれながら外を見ている谷下さんの姿が見えた。

その場は素通りして、スノコの上で上履きを脱ごうとした時に、なんだかか細いあの肩が頭を離れなくて、私は充希に先帰ってて、と言っていた。


「谷下、さん」

びくり、と肩が跳ねて怯えるように振り向いたが、私だとわかると、興味を失ったのか再び窓の外を眺めた。

「野球部、見てるの？」

私の声が聞こえていないはずもないけれど、谷下さんは私の声を無視するので、谷下さんの横に並んだ。

案の定、窓の外ではグラウンドで野球部が練習している。

「何しに来たの？」

そう言われると答えに困る。

自分でも、どうしてここにいるのかわからなかった。

ただ、谷下さんの切ない後ろ姿をなぜか放っておけなかった。

「憐れまれてるなら、余計なお世話だから」

「そんなつもりはないけど」

「意味わかんないから、マジで」

グラウンドでは脩がピッチングの練習をしている。

流れるような自然なフォームだ。

谷下さんの視線は、ずっと脩に向けられている。