青夏ダイヤモンド
「私も、どうしようもないんだ。谷下さんが1番わかってくれると思うけど」
「ふざけんな。わかりたくもない」
「谷下さんに何を言われようと、私の気持ちも変えようがない。だから、ごめん」
谷下さんは小さく鼻で笑う。
「あんたに負ける気しないけどね」
「だよね。私も谷下さんに勝てる気しない」
「それくらいの気持ちなら、脩を諦めてよ」
「それも無理。私の気持ちは私にすら変えられない」
「何なんだよ。ウザすぎ」
「きっと、この議論は平行線にしかならないと思う」
「あんたのこと、大嫌い」
「私も、嫌い。でも、一途に思うその気持ちは尊敬する」
私のことを睨みつけた谷下さんは私の肩を押し、自分の鞄を肩に掛けた。
「調子乗るな」
足音を必要以上に響かせながら、谷下さんは出て行った。
窓の外を見ると、野球部は休憩時間に入っていた。
私と谷下さんの話題を占めた張本人は、ちょうど欠伸をしている。
こっちの気も知らないで。
何だか腹が立って、少し乱暴に窓を閉めた。