青夏ダイヤモンド


「鷹野もいたわけ?見せたい相手」

不意に言われた言葉に反応すると、脩が「浴衣」と続ける。

自分も浴衣を着ていることを思い出し、さっきの言葉も反芻して慌てて首を振る。

「私は、充希に合わせただけで、普段着で来る気満々だったから」

「男的にはいいけど、浴衣」

ドンッ、と胸の奥に響いた重い音は始まりを告げる大きな花火。

けれど、それと同時に花火のせいだけではない物が確かに胸を貫いた。

1番初めに浴衣の柄に興味を示したくせに、この段階でそういうことを不意打ちで言うのは、

「・・・ずるい」

「何か言った?」

「何でもない」

「何?」

「何でもな・・・」

花火の音に負けじと大声で答えようとして、思いのほか脩の顔が近くにあることに気づいて、咄嗟に距離をとる。

訝しげに首を傾げた脩は私の声を聞き取ることを放棄して、打ち上がる花火を見上げた。

私も花火を見上げたが、隣に意識が向き過ぎていて、ちっとも集中できなかった。


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