青夏ダイヤモンド


脩が言った通り、充希と沖田くんは帰って来ないまま、最後の花火が打ち上がり、終了のアナウンスが響いた。

それと同時に周りの観衆が動き出し、私達もその波に乗るが、おしくらまんじゅう状態で流されるままに進んでいるだけだった。

何度も脩とはぐれそうになり、その度に手を伸ばして脩の裾を掴んでいると、その手を脩が掴んで、引き寄せた。

「人混み抜けるまで我慢しろよな」

それが手を繋ぐことだということに気付き、この人はちっとも私の気持ちに気付いていないんだな、と思った。

遠慮がちにも繋がれた手を、私の方から強く握る。

骨ばった、固い手だ。

私の大きめの手も容易に包めそうな、そんな手。


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