青夏ダイヤモンド


試合開始前はお互いのチームがバッターボックス前に走り、審判を中心にして一列に並び、礼をした。

走って行く脩の背中に「1」が付けられているのを見て、ああ、本当に1番をもらったんだな、といつか脩が「まだ1番をもらってない」と密かに見せた自らの自信を思い出す。

マウンドに立った脩は感触を確かめるように方足で半円を描くような素振りをし、最初のバッターを見据えて一瞬動きを止めると、滑らかな動作で投球フォームに入った。

バシッ、と乾いた音が鮮明に聞こえた。

また、球威を上げたように見える。

難なく三振を奪うと、次のバッターにはカーブも織り交ぜて三振を取った。

春に見た時より、カーブの精度も上がっている。

簡単に3アウトを取ってチェンジになると、キャッチャーの生徒に肩を叩かれ何か声を掛けられると、満足そうに笑みを浮かべた。

野球をやっている時には、そういう風に笑うのか、と気付けば脩ばかりを目で追っていた。


< 119 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop