青夏ダイヤモンド
いくつめかの駅に止まった後、通路を歩いて来た見覚えのある長身に思わず「あ」と口走っていた。
「また、司馬さんか」
「はい?」
「司馬遼太郎好きな司馬さん」
彼は私を指さした。
「し、司馬じゃないし!鷹野!」
「は?鷹野?」
驚いた顔なんかして、まさか本当に司馬だとでも思っていたんだろうか。
バカじゃないのか。
「鷹野都。あなたと同じ、成南高校1年!」
「あ、そ」
「待って!」
そのまま通過していこうとするので、私は彼を呼び止め、立ち上がった。
「昨日はごめんなさい。足が痛いのに立たせて。今日は座って。私がどこか行くから」
彼の前を横切ろうとすると、腕を掴まれた。