青夏ダイヤモンド
戦況は一進一退のほぼ互角。
相手の投手もさまざまな球種を使い分け、バッターを翻弄し、なかなか良い球を打たせてもらえない状況だった。
そんな中、最大のチャンスは7回裏で訪れた。
盗塁と犠牲フライを使って3塁までランナーを進めた成南野球部の次のバッターは脩で、既に2アウト。
力を抜いてバットを構え、ピッチャーが動きを見せると腰を落として構えた。
最初はストライク。
手元で急激に落ちるボールの上をバットが掠める。
次は外角に投げてボールの球。
これは見極めて脩は微動だにしなかった。
思わず私はベンチから立ち上がり、フェンスを力強く掴んでいた。
「打って」
2ストライク2ボール。
もう一度ボールで牽制してくる可能性もあるけれど、勝負を仕掛けてくる可能性もかなり高い。
どっちだ。
ピッチャーが振りかぶり、全力投球を見せた。
「打てーっ!!」
金属音が響くと、私の視界を白球が横切って行った。
同時にランナーが走り出し、内野と外野の間にボールが落ちる。
歓声と共に戻って来たランナーを部員達がハイタッチで迎えた。
1塁に残った脩は膝のプロテクターを外して部員に渡していた。
その様子を眺めていると、不意に脩がこちらを見上げた。
やばい、声出したの私だってバレた・・・?
こそこそとフェンスから離れると、身を縮めるようにベンチに遠慮がちに座った。