青夏ダイヤモンド


練習試合は成南高校の勝利で終わった。

沖田くんが出て来るのを待つという充希に付き合って、球技場の入り口付近で立っていると、胸や膝に砂をつけた沖田くんが最初に出て来た。

「お疲れ様ー」

「わー、ありがとー」

充希はペットボトルを差し出しながら沖田くんを迎え、それを嬉しそうに早速キャップを開けた。

「鷹野の声、聞こえたよ」

「それは言わないで」

「何で?やる気出たけど。脩だって打てたし」

後ろから来た脩に沖田くんは同意を求める。

「意外と声でけーね」

それだけ言ってあちー、と言いながら、横切って行った。

「何なの、あれはー!」

充希が憤怒するのを沖田くんが宥める。

「照れてるんだって。あの後ベンチに戻って来た脩、みんなから彼女か、ってからかわれてさー」

「うわ、絶対それ迷惑がられたよね。あれはちょっと熱入っちゃってて。謝ってこようかなっ」

沖田くんの止める声が聞こえたけど、またしばらく会わないのに悪い印象を残したまま別れたくないと思った。


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