青夏ダイヤモンド
歩幅の大きい脩に追いつくのに随分走ってしまった。
「脩っ」
呼び止めた時には既に息が切れていて、この暑さで汗も滲んでいる。
「私、気づいたら叫んでた。打て、って。脩がどう思われるか、って何も考えてなかった。ごめん」
彼女だとからかわれるにも、充希みたいな子の方が良かったに違いない。
「鷹野の言っていることが、わからないけど」
「え、何で?」
「何で、って、応援だったんじゃねぇの?」
「そう、だよ」
「聞こえた。鷹野の声。打て、って言われて、当たり前だろ、って思ったけどな」
「その後、からかわれて嫌だったでしょ?」
「あー、彼女ってやつ。僻みだろ。女子の声援ないから」
どうやら私が思うほどに気にはしていないようだった。
「野球、普通に見れたんだな」
「え?」
「野球に拒否反応あったろ?かなり進歩してるよな」
「そう、だね。楽しんでたかも」
「いいじゃん。また来いよ」
「う、うん。行く!」
「応援もな。あれは結構優越感だな」
野球にのめり込んだのは、脩に頑張ってほしかった一心があったのも大きい。
野球のことを考えると、ついて回る昔の自分も同時に思い出すのが嫌だった。
野球には何の罪はなかったのに、野球ごと嫌いになってしまっていたことに初めて後悔した。