青夏ダイヤモンド
「痛くねぇよ、こんなん。黙って座っとけよ」
「足引きずってるくせに。後で恨まれても嫌だし」
掴まれた腕をそのまま引っ張られて無理矢理席に戻される。
その後、彼も斜め前の席に腰を下ろした。
「これでいいか?」
本意ではなかったけど、面倒臭そうな顔をしているのでこれ以上騒ぐことはやめた。
けれど、これはこれで気まずくて、田んぼだらけで変化の無い風景をただひたすらに眺めた。
「読めば」
私に話しかけられているとは思わなくて、反応が遅れる。
「本。いつも読むんだろ?」
「・・・馬鹿にするじゃない」
「馬鹿にしてねぇよ」
「渋いって」
「渋いは馬鹿にする言葉じゃねぇだろ」
言われてみれば、私が勝手に馬鹿にされたと思っただけで、渋いという言葉自体は貶す意味ばかりの言葉ではない。
命令されて本を開くのも気まずかったけれど、開かないことも気まずくて、膝の上に置いていた本を開いた。