青夏ダイヤモンド


何も考えずに飛び出したはいいものの、2人がどこにいるか見当もついていなかった。

人気の無いところだろう、と思っていたけど、今の時間なら後夜祭の準備にグラウンドに出ている生徒が多数なので校舎内の方が閑散としていた。

階段の上り下りを繰り返しながら教室のドアに付いている窓から中を覗き込むことをしていると、だんだんと自分は何をしているのかと思い始める。

これで、本当に2人を見つけたら自分はどうするつもりなんだろう。

脩だけを見つけるならまだしも、2人の決定的瞬間を見てしまったらどうしよう。

さまざまなパターンを想像しながら、それでも走り回っていると、ガタンッ、と奥の方で物音がした。

今は使われていない奥の空き教室で電気も付いていないが、ドアの上部にある窓に静かに顔を近づけると月明かりに照らされて、立った状態で重なる2人の影が見えた。

逆光で顔までは見えないが、男子生徒と女子生徒が抱きしめ合っているように見える。

より顔を近づけた瞬間、窓の外で大きな花火が上がった。

その光に照らされて、一瞬だが男子生徒の横顔が見えた。

それは、紛れもなく脩の横顔。

それに気づいた瞬間、窓から顔を離し、壁に背中を付けて崩れ落ちていた。

遅かった。

花火の音が地響きのように聞こえる。

2人の影が頭の中に焼き付いて離れてくれない。

付き合いたい、なんて思っていなかった。

でも、もう私の気持ちは受け止めてもらえないのだと思うと、鼻の奥がツンとした。

いつの間にか、私は脩のことをこんなに好きだったのか。




< 144 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop