青夏ダイヤモンド
突然横のドアが勢い良く開け放たれ、女子生徒が飛び出し、そのまま私に気づきもしないで走り去って行った。
あれは、谷下さんだった。
そして、鼻をすすって、泣いているように思えた。
「趣味悪。覗き見か」
振り向くと、脩がギョッとした顔になる。
「泣いてんの」
頬に手を当てると、目から顎まで濡れた感触が指を伝い、何故かまた新たな涙が目から溢れてきた。
「おい、どうした。どっか、怪我でもしてんのか?」
私が座り込んでいるからか、立てない理由があるのかと、脩も私の目線にしゃがみ込み、体を覗き込むように視線を向ける。
「谷下さん・・・。谷下さんは?」
「やっぱり、見てたのか」
「・・・抱き合ってた」
「バカ。あれは、谷下が突然抱きついてきたんだよ」
「告白されたの?」
「あー、そうだよ。でも断った」
谷下さんが泣いていたように見えたのは勘違いではなかったのか。
その気持ちがわかって苦しくなる反面、どこかホッとしている自分もいた。