青夏ダイヤモンド
8


私がいつも登校時に使う朝早い電車に脩が乗ってくるようになったのは、文化祭の後からだ。

空いている車内はいつもボックス席を私1人で占領していたけど、脩が乗って来ると迷い無く車内を歩いて来て、私の向かいの席に腰を下ろす。

脩が乗って来ると駅に近づくにつれて、手元の物語は頭に入って来なくなるけれど、脩が私の前に来る直前まで本に集中していたふりをしてから顔を上げて挨拶をする。

浮き足立っている私の心を見透かされまいとして、こんなことをしているわけだけど、それには理由がある。

短い挨拶を交わして、脩も本を開くのだけれど、最近はすぐに本を開いたままの状態で眠ってしまう。

起きていたとしてもお互い本を読んで過ごすので、何の問題もないし、何も喋らないものの一緒にいられる時間が毎日あることは嬉しいことだ。

私が気になっているのは、文化祭後の脩の態度に何の変化も見られないことだった。

後夜祭の時のことは夢だったんじゃないかと思うほど、次の日からも全く変わらなかった脩の言動が日々私の不安を煽る。

私は脩が目の前にいるだけで、本の中身が入ってこなくなるのに、脩は安らかな寝息をたてるまでにリラックスしている。

私ばかりが脩の存在に翻弄されている気がする。


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