青夏ダイヤモンド


そんなことを含めて、デートすら一度もしていないことを充希に話すと、珍獣に出会ったかのような顔でわかりやすく呆気にとられていた。

「あれから1ヶ月経ってるのに?何でデートもしてないの?」

「何だか脩、忙しそうで。疲れている時もあるし」

「平日は部活だとしても、休日ずっと部活ってわけでもないでしょ?誘ってみたことないの?」

「それとなく言ったことはあるけど、予定があったりして行けてないんだよね」

「彼女よりも大事な予定がどんだけあるのよ、あいつは」

下駄箱に上履きを乱暴に入れて、呆れたように太い息を吐く。

「私、彼女ってことでいいのかな?」

「告白した後にキスされたんなら、彼女だよ。そこは自信持ちなよ」

「彼女らしいと実感したことないんだけど」

登校は毎日一緒にするようになった。

ポツポツと言葉を交わしながら歩いて来るけれど、本の話や野球の話がメインでカップルらしい会話は感じられない。

そもそもカップルらしい会話がどんなものかもわからないからそこも問題だ。

「ねぇ。さすがにクリスマスはデートの誘い取り付けるんだよ?」

「クリスマスかー。充希達はどう過ごすの?」

「私達は旅行行こうって話してる」

「旅行!?」

「来年は受験だからそんな大きなことできないでしょ?そしたら、今年しかないか、って。親には友達の家に泊まるって嘘つく予定」

私の想像などゆうに越えて来る程充希と沖田くんは順調に交際を進めている。

クリスマスに好きな人と行く旅行なんて、ロマンチックだ。

旅行なら別れる時の寂しさも無く、一日中一緒にいられるのだな、と思うと2人のことが羨ましく思えた。



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