青夏ダイヤモンド
「これあげる」
甲子園の中継を見ていて、マネージャーが選手のために作ったお守りが紹介されていたのを見て、私も慣れない裁縫を駆使して春休み中にお守りを作成した。
「今年は最後の夏だから。悔いのないようにしてほしい、って願いを込めました」
「手作り」
「ちょ、ちょっと縫い目とかね、雑なところもあるんだけど」
ごにょごにょと言い訳をしていると、サンキュ、とお守りを手にした脩がそれを掲げた。
「なんか甲子園すら行けそうな気してきた」
「うそー。毎年かすらないのに」
「うそー、ってそこは嘘でも甲子園に絶対連れてって、とか言うんじゃねぇの?」
「脩も南ちゃんに憧れたことある人?」
「全ての球児が通る道だろ」
「えー、そう?私、ドカベンなんだけど。久々に読みたくなったなー」
「俺ん家あるよ」
「え?脩の部屋にあったっけ?」
「姉ちゃんの部屋に押し込んでる」
「えー、見たい見たいっ」
思わず体を乗り出すと、逡巡するような素振りを見せた脩が提案する。
「じゃあ、寄り道後、俺ん家来る?」
「行く!」
今日は始業式で午前中には学校が終わるし、脩と長くいられそうだ。