青夏ダイヤモンド


「これあげる」

甲子園の中継を見ていて、マネージャーが選手のために作ったお守りが紹介されていたのを見て、私も慣れない裁縫を駆使して春休み中にお守りを作成した。

「今年は最後の夏だから。悔いのないようにしてほしい、って願いを込めました」

「手作り」

「ちょ、ちょっと縫い目とかね、雑なところもあるんだけど」

ごにょごにょと言い訳をしていると、サンキュ、とお守りを手にした脩がそれを掲げた。

「なんか甲子園すら行けそうな気してきた」

「うそー。毎年かすらないのに」

「うそー、ってそこは嘘でも甲子園に絶対連れてって、とか言うんじゃねぇの?」

「脩も南ちゃんに憧れたことある人?」

「全ての球児が通る道だろ」

「えー、そう?私、ドカベンなんだけど。久々に読みたくなったなー」

「俺ん家あるよ」

「え?脩の部屋にあったっけ?」

「姉ちゃんの部屋に押し込んでる」

「えー、見たい見たいっ」

思わず体を乗り出すと、逡巡するような素振りを見せた脩が提案する。

「じゃあ、寄り道後、俺ん家来る?」

「行く!」

今日は始業式で午前中には学校が終わるし、脩と長くいられそうだ。


< 170 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop