青夏ダイヤモンド


修との電車の中での読書時間はそう長くは続かなかった。

ある日を境に修は私と同じ時間に乗り合わせ無くなった。

そもそも、半年以上電車の中で見た事がなかったのに、急に見かけるようになったのは、本来なら別の時間にこの電車を利用していたということだ。

気になってしまって、グラウンドにいる野球部から修を見つけ出すために立ち止まる。

修は他の部員に混じって、投球練習をしていた。

そうか、足が治ったのか。

だから、生活リズムが負傷する前に戻ったのかもしれない。

修が怪我したがために、顔を合わせただけ。

怪我が治れば前の通りだ。

1年生の中でエースと噂される輝かしい存在の脩と私が交わるはずはなかったのだから、それが元に戻っただけのことだ。

渡したかった文庫本が入った鞄の持ち手を握り締めて、その場を立ち去った。


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