青夏ダイヤモンド


「鷹野さーん。呼んでるよー?」

次の日の休み時間に教室の出入り口から女子生徒が私のことを呼んだ。

私に訪問者なんて初めてのことで戸惑っていると、翔馬くんが顔出して小さく頭を下げた。

廊下に出ると、昨日貸した折り畳み傘を返しにきてくれたようだった。

「すっごい、助かりました」

「3年のクラスまで、わざわざありがとう」

「見せたい物もあったんで」

「見せたい物?」

小脇に抱えていた古そうな雑誌が目の前に開かれた。

「片付けてたら出て来たんです。懐かしくないですか?俺、これ見て都さんに憧れたんですよー。体が大きくなくて力があまり無くても優勝投手になれるんだ、って」

その雑誌の記事には、小学生の頃の私が投球している瞬間の写真が載っていた。

確か、活躍する小学生を特集する記事で、大会の優勝後にインタビューされたのではなかっただろうか。

優勝投手が女の子で珍しさもあって、やたら大きく取り上げられてしまったのだ。

「何で、途中でやめちゃったんですか?」

そんな、責めるような目で見ないでほしい。

あの目と重なりそうになってしまう。



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