青夏ダイヤモンド
朝の電車の中では私も脩も無言でいたけど、電車を降りた途端、脩が口を開いた。
「沖田に聞いた。余計なこと言った、って謝られた」
「うん。びっくりした」
「言わなくて、ごめん」
「ううん。私が勝手に地元って勘違いしてただけだから」
「いや、ずっと地元だった。あまり深く考えないで地元でいいか、って思ってただけで、東京の大学受けようと思ったのは最近だった。突然進路変えたから、ヤマセンに理由説明したりしてたわけ」
「どうして、東京の大学になったの?」
「スポーツ医科学って学部に行きたいと思ってる。それで、将来トレーナーになれれば、って」
脩はしっかりとした将来を描いているんだ。
私は自分のことばかり考えていたな。
「鷹野のこと、考えてなかったわけじゃない。けど、やりたいこと見つけたから、やってみたかった」
私が背中を押さないで、誰が押すと言うんだろう。
「脩がやりたいことなら、私は応援するよ。だから、東京の大学、絶対受かってね」
遠距離になるけれど、一生会えなくなる距離ではないし、距離が離れたって、きっと、私達は大丈夫だ。
根拠の無い自信は、そう言い聞かせないと不安で押しつぶされそうになるからだ。