青夏ダイヤモンド
電車を待ちながら、東京までの運賃を携帯の電卓で計算してみることにした。
まずは月1で会うとして、4年間通った場合。
打ち出した数字に溜息が出る。
交互に行き来したとしても、この半分か。
そもそも、月1で足りるのだろうか。
バスならもう少し運賃を下げられるものの、バイトは必須だ。
大学行きながらバイトができるのかも想像できない。
それに、東京にはもっと楽しいことがいっぱいあるはずで、友達もきっとあか抜けているだろうから、忙しくなって私と会ってくれなくなるんじゃないだろうか。
そうやって、別れることになる、とか・・・。
「さっきから溜息ばっかりですけど、大丈夫ですか?」
顔を覗き込んできたのが部活に出ているはずの翔馬くんだったので、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
「部活はどうしたの?」
「病院に行くので、休みました」
「病院って、怪我でもしたの?」
「今日、体育で転んだ時に変な落ち方して手首捻っちゃったんです。大したことはないんですけど、念のためってことで」
応急処置だろう包帯が巻かれた右手を見せて苦笑いを浮かべる。
「利き手なら、日常生活も大変だし、ボールも投げられないよね」
「そうなんで、これを機に左手も使えるように鍛えてるんです。両方使えた方がなんかいいって聞いたことあるし」
「なんかって、重要なところなのに」
照れ笑いを浮かべた翔馬くんはスーパーポジティブ人間なのだろう。
怪我をしても悲観的にならないで、それをプラスに変えてしまう才能があるみたいだ。