青夏ダイヤモンド
特に思いつく話題も出てこなくて、窓の外を眺めていると、翔馬くんが、ふと呟いた。
「駅で溜息ばっかりついてたのは、中川先輩のことですか?」
「え?」
「なんか、泣きそうにも見えて、そういうのって恋愛系かなぁって思ってたんですけど、違いました?」
そんな顔していただろうか。
ただ、考えていたことは間違っていないので洞察力はなかなかのものだ。
脩のことはあまり語らず、遠距離恋愛をどう思うか訊ねてみる。
「俺、経験ありますよ」
「え!?いつ?」
「中学2年の時に、彼女が転校することになったんで、それで遠距離です」
中学2年生で彼女がいたことにも驚いたが、それが遠距離になってしまうとは更に驚きだ。
私より恋愛偏差値高そうだな。翔馬くんモテそうだし。
「その彼女とはどうなったの?」
「お互い中学生だったんで、夏休みに1回会っただけで、お互い好きな人できて別れちゃいました」
あっさりと別れた話をされたので、ショックを受ける間もなかった。
「あ、すみません。これじゃあ全然参考にならないですよね。でも、大学生はまた違うんじゃないですか?バイトもできるし、東京なら中距離くらいだし」
2つ年下なのに、翔馬くんの方が大人な気がしてくる。